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2019.03.17 (Sun)

My Favorite Song ~銀のセイレーンの歌~ 第六部 3-3

「この辺りの海じゃ知らねぇもんはいねぇ。今一番厄介な海賊団の名さ」
 他の人達も皆しきりに頷いている。小さく舌打ちをしたラグに私は訊く。
「セリーン、無事なんだよね?」
「あぁ、そう見えたが」
「ギグとなんか話してる様子だったな」
 乗組員のひとりがそう声を上げた。
「ギグって」
「その新人の名だ。まあ偽名だろうがな」
 おじさんはそう吐き捨てるように答えた後で私たちに言った。
「もしあの姉ちゃん追いかけるんなら、非常用のボートを貸すが」
「いや、必要ない」
 ラグはおじさんの言葉を遮り船縁に向かって歩きはじめた。私は慌てて後を追う。
「追いかけるんだよね? 術で飛ぶの? でも向こうが安全かどうかわからないし、私が歌って」
 だがぎろりと睨まれ私は口を噤んだ。ラグは遠く見える海賊船に視線を向けた。
「あいつ、海賊船に乗り込んだ後で俺にお前を頼むと言いやがった」
「え?」
 それを聞いてどきりとする。
 ――それって……。
 どんっとラグが船縁を叩く。
「くそっ、あいつがいなくなると金髪野郎の手掛かりが消えちまう」
 そうだ。セリーンの家にあったというエルネストさんの肖像画。それが今唯一の彼の手掛かりなのだ。それを追ってセリーンの故郷のあった地へと向かっているのに彼女がいなかったら捜しようがない。
 でも今はそれよりも“なぜ”という疑問の方が遥かに大きくて。
 ラグが私を見た。
「飛ぶぞ。あの王子がこれからユビルスの術士を雇うってんなら構いやしないだろ」
「そうだよね。でも、もしあっちに着いて危なそうだったら私歌うよ。海賊たちが相手ならいいでしょ?」
 小声で言うとラグは眉を寄せながらも頷いてくれた。
 いつものようにラグが私を抱き上げてくれて、私は彼の胸元をぎゅっと握る。
 ふとこちらを見つめるたくさんの視線に気付いて私は慌てて彼らに向かって頭を下げた。
「お世話になりました!」
 同時に「すまない、力を貸してくれ」という優しい声が聞こえて。
「――風を、此処に!」
 ふわりと風に包まれ私たちは一気に空へと舞い上がった。

 ぐんぐん近づいてくる海賊船を見つめながら私は彼女の目立つ赤を探す。
 ――ラグに、私を頼むと告げたセリーン。
 一瞬、もうこれでお別れだという意味に思えた。
(違うよね? セリーン……)
 知らずラグの服を掴む手に力が入っていた。


 To be continued...



以下反転であとがきです。
♥ More..Open
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2019.03.05 (Tue)

第4部CV様募集中!


おかげさまで先月26日にMFSが連載13周年を迎えました。
マイペースに長々と続いている作品ですが、いつもあたたかく見守ってくださり本当にありがとうございます。

そして以前よりこそこそと呟いておりました、新イメージCV様の募集を開始いたしました。

第4部CV募集

募集キャラは第4部に登場する、ツェリウス、クラヴィス、ドナ、ルルデュールの4人です。
(フィエールを募集するかどうしようかとても迷ったのですが今回は(?)やめにしました)

数えてみたら実に9年ぶりの募集でして、今時でないおかしなところがありましたら教えていただけると大変有り難いです<(_ _)>
他、何か不明な点ありましたらお気軽にTwitter(リプ/DM/マシュマロ)等から聞いてください。
少し長い期間ではありますが、たくさんのご応募お待ちしております。

どうぞよろしくお願いいたします!
本編第6部の更新も頑張ります!!

00:08  |  ボイス企画製作日記  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2019.02.27 (Wed)

My Favorite Song ~銀のセイレーンの歌~ 第六部 3-2

 それからどのくらい経っただろう。
 時折聞こえてくる大きな声や物音にビクビクしながらひたすら祈りふたりの帰りを待った。その時間は長くもあっと言う間にも感じられた。
 ぐらりと船体が一度大きく揺れて、そのすぐ後だ。バタバタと足音が近づいてきたかと思うと乱暴に扉を叩かれびくっと肩が跳ねる。
「俺だ開けろ!」
「ラグ!」
 私は歓声を上げすぐに鍵を開けた。
 扉が開いて見たラグは酷く慌てた顔をしていて嫌な予感がした。
「セリーンは」
 そう言いかけてぐいと腕を取られ強く引っ張られる。
「来い!」
「え!?」
 つんのめるようにして私は廊下に出た。ラグはそのまま甲板の方へと走っていく。後ろから飛んできたブゥが彼のポケットに入るのを見て私は訊く。
「ねぇ、セリーンは」
「あいつ、海賊船に乗って行きやがった!」
「えぇ! ど、どういうこと!?」
「こっちが訊きたい!」
 混乱したまま階段を上がり甲板への扉が開く。強い風に一瞬目を閉じてから海に視線を向ければすでに遠く海賊船らしき船が見えた。この船と同じくらい大きな帆船だ。
「あれに、セリーンが?」
 頷くラグ。
「連れ去られたんじゃなくて?」
「俺には自分から乗っていったようにしか見えなかった」
「もしかして、この船を守るために身代わりに」
「あいつがそんなタマかよ」
「ありがとうございました!」
 そのとき乗組員たちが一斉に声を掛けてきてぱっと掴まれていた腕が解放された。皆疲れ切った顔をしているが大した怪我は無さそうだ。
「あんたたちのお蔭で仲間も荷物も無事で済んだよ」
「しかしまさかあの新人が海賊の一味だったとはな。まんまとやられたぜ」
「え?」
 悔し気に呟いたのは昨日食堂で話したあの豪快なおじさんだった。その手には乗組員の帽子がひとつ握られていて。
(新人て、もしかして……)
 彼も声を上げた私に気付いてくれたみたいだ。
「あぁ、ほれ、昨日カウンターで潰れてたあいつさ」
 ――やっぱり! 昨夜セリーンと甲板で会ったあの若い人だ。
 他の乗組員たちも皆悔しそうに海賊船の方を見つめた。
「あいつに傭兵の手配も任せてたからなぁ」
「くそったれめ! 酔ってたのも全部振りだったってわけだ」
 握っていた帽子――おそらくはその彼のものだったろうそれをぐしゃりと握り締め、おじさんは続けた。
「それにしても、あの1stの姉ちゃんは一体どうして」
 するとラグがその人に訊ねた。
「あの旗に見覚えは?」
 ――旗?
「見覚えも何も、ありゃブルーの海賊旗だ」
「ブルー?」
「この辺りの海じゃ知らねぇもんはいねぇ。今一番厄介な海賊団の名さ」


⇒次話
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